本記事は2022年2月に作成されたインタビュー記事です。
みんなの笑顔が連なる場所に
「この店に来ると元気になれる」――誰もがそう口をそろえるのは、オーナーである実果さんの朗らかで前向きな人柄が、店の明るい雰囲気をつくっているから。
「ハッピーなオーラは人にも移る。お客さんを幸せにするためには、まず自分が楽しんでいないと」。そう笑う実果さんの元には、マスカットの房のように人々の笑顔が連なる。
店に一歩足を踏み入れると、何よりもまず豪華なシャンデリアに目が吸い寄せられる。ゴールドやバラが随所にあしらわれ、ゴージャスな気分に浸れる内装は、実果さんが「一目惚れした」というこのシャンデリアからイメージを膨らませていった。
「女性のお客さんも多いから」と、女性が美しく見える照明器具にこだわり、女性用化粧室も、気分が〝アガる〟デコラティブなデザインにした。一方、男性用化粧室はシックな仕上げに。小学生の息子さんから「男は落ち着けるほうがいいんだよ」とアドバイスを受けたからだ。
実果さんにとって息子さんの存在は大きい。実は、仮設から本設店舗へ移るかどうかというタイミングで、実果さんに腎臓の病気が発覚した。
「『人工透析になる』と聞いた時も、そうなんだ~、まあ頑張るしかないよねという感じだった。でも、ステロイドの副作用もあるという中、きっぱり透析を選択できたのは、守りたいと思う息子がいたおかげ」
幸い移植が成功し、店も再建できた。身体は以前と全く同じとはいかないが、「不安は全然ない」と笑う。「もしかしたら『なかったかもしれない』命。生き伸びたからには人生を謳歌したい」。日ごろから後ろ向きなことは口にしない主義。「暗い雰囲気は伝染するけど、明るい空気も同じく伝染する。ならば楽しいほうがいい」と笑う実果さんの性格が、この店のカラーであり、愛されるゆえんだ。
自身はお酒を飲まないが、酒席の「キラキラした雰囲気が好き」といい、特にシャンパンの品揃えにはこだわる。お客さんが別のお客さんに珍しい銘柄のシャンパンを飲ませてくれたりと、訪れた人同士が仲良くなるきっかけにもなっている。
ブドウの房みたいに、お客さんが連なるように――店名の「マスカット」に込められた思いだ。
その願い通り、常連や口コミの客が連なって訪れてくれる。「お客さんにも、従業員にも恵まれた」と感謝を忘れない実果さんは、「人によって求めるものが違うので、日々勉強が必要。
『うちはこうだから』と決めつけず、新しいもの、若い人の意見を取り入れながら変化に対応していきたい」と謙虚にほほ笑む。