本記事は2022年5月に作成されたインタビュー記事です。
ドローンを飛ばして緑を守る
ドローンを主軸とした先進の技術と、自身がもとから持っている造園の経験・知識とを掛け合わせれば、「まだこの地で誰もやっていない仕事を創出できるのでは」――合同会社ディーエフジーピー代表社員の小山祐樹さんはそう考えた。復興需要が落ち着き、仕事が減少していく未来も見据え、40歳で新規事業に乗り出した小山さんは、「チャレンジショップ」で実績を積み、陸前高田の未来に残せる事業を育てていこうとしている。
ドローンを活用した造園、農地・森林管理を手がけるディーエフジーピー。社名はDrone Flight Greening Protectionの頭文字を取ってつけた。「『ドローンを飛ばして、緑を守る』。分かりやすく直訳にしただけで、正しい英語ではないんですけどね」と小山さんは笑う。
もともと市内で父・芳弘さんとともに造園の仕事に就いていたが、ドローンに取り付けて使う「マルチスペクトルカメラ」との出合いが、独立の大きな転機になった。
マルチスペクトルは、可視光線や赤外線など波長帯の異なる電磁波を捉え分けられるカメラで、上空から撮影すると健康な緑は赤っぽく、枯れた葉などは灰色に写る。植物の生育状況を「色」で簡単に認識でき、広大な芝生や森林の管理にも役立つのだ。
もともと機械が好きで、小さいころはパイロットになることも夢見たほどの小山さんだから、ドローンやレーザースキャナーといった機器を扱う仕事が純粋に楽しくてならない。そしてのめりこむほどに、それらの機能と「緑を守る」活動の親和性の高さや面白さに気づくのだった。
ある農地では2日間かけて行っていた農薬散布が、ドローンでの空中散布に切り替えたところ、わずか4時間に短縮できた。森林調査にかかる費用と時間を大幅に節減できるレーザースキャナーも、ドローンと併用すればさらに精密なデータを取ることができる。
地域の高齢化が顕著になる中、農林業の省力化は重要な課題だ。小山さんの仕事の需要は今後ますます増えていくと期待できる。
高田松原に植樹された松苗の育成管理や、子どもたちを対象としたドローンスポーツ教室の開催など、未来に向けさまざまな構想を練る小山さん。「陸前高田の若い人たちが楽しみながらできるような仕事を創出し、少しでも将来の選択肢にしてもらえれば」と夢を膨らませる。